講談社 (2007/08/23)
名脇役達がもっと見たい
痛いくらいに・・・
松方、頑張れ♪
昔別れた彼女のことを想い出していた。
彼女は、僕の傍で働き、いつか一緒に仕事をする為に。と云って
大学を卒業し、決まっていた航空会社への就職を蹴り放って放送の世界にやってきた。
程なくして付き合い始めた僕達は、互いに結婚することを疑って居なかったと思う。
ところが、お互いに放送業界内での違うキャリアを積んでいくことで
いつからか見つめる未来が変わってしまっていた。
喧嘩が増え、反比例してコミュニケーションは減り、最後は枯れるように終わってしまった。
彼女にとって、僕の傍に居る為だった仕事はいつからか自分が追い求めるべき道となり、
その道を阻みかねない僕はいつからか疎ましい存在になっていたのだと思う。
最後は、どれだけ抱き合っても、お互いの心を満たすことは出来なかった。
想いを遺しながら、疲れ果ててその関係にピリオドを打った僕は
仕事に打ち込まなければ自分を支えることが出来なかったと思う。
あの時期の仕事は、いま振り返っても物凄い熱量で創られたものだったと感心する。
あの時期の僕には、仕事だけが大きな穴の開いた心を満たしてくれる存在だった。
その後彼女は別の誰かと結婚した。
それを知り、改めて絶望した僕は、いつか彼女が後悔する程の男になろうと思った。
それがきっかけで東京に出て、もしかしたらサラリーマンも辞めたのかもしれない。
月日は流れ、彼女は離婚したの。と電話をしてきた。
それを聞いた僕は、自分でも驚くほど冷静だった。離婚の原因以外について、だが。
僕にとって、彼女を見返す為だった仕事は、僕の進むべき道であり、未来になっていた。
彼女は今も放送の世界で戦っている。おそらくそれは、彼女の進むべき道なのだろう。
仕事はどんな動機でも始められるし
どんな意識でもやっていくことができる。
ただ、仕事は人生の最上位概念に置くことが可能な希少な存在であり
家族や親友でさえ救えない絶望に対して、出口を与えてくれることが出来る希少な存在である。
そのゴールがいつ、どのような形で訪れ
僕がどのような表情でそこに至るのかはまだ想像が付かないが
仕事を中心に据えたその人生が、くすんでつまらないものにならないように
今を頑張っていこうと思う。