オーバーシーズ・レビュー#2

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「普通だけど精緻」な点が好きなんです。

さて、ヴァシュロン・コンスタンタン:オーバーシーズ(Ref.42042/423A)のレビュー。
今回は後半戦です。
37mm径なのに、意外とボリューム感がある…とお話ししたこの時計。
本来時計が実寸より大きく見えるときは、
ベゼルが薄く、かつ文字盤がシンプルであることが多いと思います。
実際僕が持っている時計の中だと、オメガのシーマスター・アクアテラ
ブレゲのクラシックなどは、そのようなデザインになっています。
ところがこのオーバーシーズは、そんな「定石」からは外れているんですね。
まずベゼルは、マルタ十字と共通する複雑なラインを象っていますし
文字盤には大きなアラビア数字のインデックス。更にその外周には5分おきにピラミッド型のインデックス。
3時位置にはカレンダーの窓が開き、12時位置にも6時位置にも二行ずつプリントがあります。
これだけ要素が盛り込まれているのに、なぜ大きく見えるのか?これが目下の謎です。
ケースデザインにお詳しい方、ぜひご教授ください。
そんなオーバーシーズの文字盤は、時として「ガワだけ自慢の雲上時計」と揶揄されるヴァシュロンだけに
(もちろん、実際にはそんなことないと信じていますが)非常に完成度が高いです。
第一、これだけてんこ盛りの要素をよくこの狭い面積にまとめられるものです。
この世代のオーバーシーズはバーインデックスが主流ですが、僕は圧倒的にアラビア数字派。
デザインの方向性がブルガリ・エルゴンに似ているので、ラインナップの中で重複を避けたいのもあります。
数字インデックスには夜光塗料が盛ってあり、夜間の視認性は上々です。
また、外周のピラミッド型インデックスはエッジが鋭く、しかも非常に綺麗に磨かれているので
文字盤を傾けるたびにキラキラと輝いて印象的です。しかしギラついた感じがないのもいいところ。
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一番仕事が細かいのはやはりマルタ十字。

メゾン銘を見ると、マルタ十字は立体感・エッジ共に申し分ない素晴らしい出来ですが
「VACHERON CONSTANTIN」などのプリントは結構危うい感じがします。
文字数が多いことからくる限界だと勝手に解釈しているのですが、最近のランゲなんかは
この辺の処理も凄いので、現行オーバーシーズの仕上げを見てみたいなと思いました。
針はまるで折刃式のカッターのような見かけ(なに針と呼ぶのかが分かりません)。
時針・分針・秒針ともに細やかで精緻な印象を持てるもので、長さも適正だと思います。
敢えてケチを付けるとしたら、分針だけ、あと0.3mm程度長くても良かったのかな。
但しカレンダーは不要です。窓の処理は丁寧だと思いますが、この時計は三針のみでよかったのでは。
またカレンダー板の背景が白である点、フォントが普通すぎる点もちょっと萎えます。
ヴァシュロンのエレガンスを演出する為には、カレンダーは蛇足なのではないかと思います。
なんじゃのかんじゃのと申して参りましたが、
やはりヴァシュロン・コンスタンタン。精緻さから来る雰囲気は素晴らしいです。
ブレゲもそうですが、この「精緻さ」が時計の品格を大きく左右しているのでは無いでしょうか。
リーズナブルな価格帯の時計ではロンジン辺りが頑張っていますが、その差は大きいです。
40mm前後のカンバスにどのような要素を配置し、それらを美しくまとめ上げるかという作業は
全体のデザイン力や、各パーツの加工精度・セッティング能力がモノを云うなと思いました。
但し、ロレックスやブライトリング、パネライのように人目を惹くような派手さ、分かりやすさは皆無です。
吊り革バトルがしたい!という方にはまったくオススメできません(笑)
この時計は、飽くまでオーナーが独りでニンマリするための一品であると思います。
まあ、カラトラバだってブレゲ・クラシックだってそんなものでしょうね。
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薄型のCal.1311のおかげで、ケースは非常に薄いです。クォーツみたい。

そうそう!この時計が届いて、一番最初にTwitterにその旨書き込みましたら
ヴァシュロンの公式Twitterアカウントからメッセージを貰っちゃいました。これも嬉しかったですね。
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ビックリしました。

ヴァシュロンをゲットしたら、とりあえず英語でつぶやいてみるといいかもしれません(笑)